野鳥救出計画
野鳥は勝手に捕まえたり治療することができません。「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(鳥獣保護管理法)」というものがあります。
もしも傷ついた野鳥が目の前にいたらどうしたらいいんだろう?と考えたことはありませんか。
僕はそんな場面に出くわしたことがあります。
・鳥獣保護管理法
簡単に言えば『何があっても見るだけにしておけ』という法律ですが、時と場合によっては「見殺しにしろ」という意味にもなってしまいます。
僕が見たのは、深い用水路のような溝に落ちてしまった鴨。
写真ではわかりにくいかもしれませんが、幅が狭く膝くらいまでの深さがあります。
羽を広げられなくて出られないのかと思った。
猫に喰い殺されるなら自然の摂理でしょうがないとしても、面白がった人間に殺されたり、このまま飢え死にはさすがに可哀想だと思った。
人間が用水路を作らなければ鴨は落ちなかったわけだから、人間としての責任を少し感じました。
でもね、野鳥に全く詳しくない僕は、どうしたらいいのかわからなくて困りました。
・困ったときは警察へ
たまにペットの大捕り物がニュースになることがあります。
それを思い出したので、まずは警察だと思った僕は某警察署に直接行きました。何か法律に触れてもイカンので、そんなことも聞きたかった。
何課に電話をすればいいのかもわからないし、時間も18時頃だったからとりあえず行ってみたんですよ。
聞いた話を簡潔にまとめます。
ペットでなければ保護できない
溝から出すだけなら警察も人の子
鳥獣保護管理法があるから、警察でも野鳥は無理なんだそうな。
テレビで観るのは『飼い主がいる鳥獣』だからこそ、警察が保護の手伝いをしてくれるとのこと。もしくは、住民に危害が及ぼす恐れがあるとき。
確かにそうだ。鴨が人を喰った話は聞いたことがない。
しかし、保護ではなく溝から出してやるだけなら警察官も人の子。可哀想と思う感情も事情もわかると言ってくれました。
どうすれば出せるか?を考えながら、警察署を後にしました。
・動物病院
鴨の溝の一区画隣に犬猫専門の動物病院があるんですよ。
生き物のことなら助言がもらえるかもしれない。捕獲網があるかもしれないとも考えた。
18時30分を回っていたから、動物病院の診療も終わる時間なので急いで行くと、そこにいたのは…
人でなし、だったよ。
絵に描いたような門前払い。
相談の『そ』の字もさせてくれない。話を聞く耳を持たない。
捕獲網を貸してもらえるなら費用も払うというのに、それはできないの一点張り。
このペットクリニックには、二度と来ることはないと思ったね。
ペットを連れて行っても大切にしてくれそうにない。
過疎ブログゆえ、ここにその動物病院のリンクを貼っておこう。知らない人に「こんな動物病院があるんだ」と知ってもらいたい。
私怨はさておき、これは困ったことになった。
・救出失敗
とりあえず、捕まえて一度溝から出そうと思った。
空なら敵わないが、翼を広げられない溝の中では結構あっさり素手で捕まえられた。
水鳥の天然の羽毛は暖かかったよ。
小鳥と違うから、翼を広げるとすごく大きい。イメージ的には鶏よりも遥かに大きくて、翼を広げると150cmくらいあったんじゃないかと思うほど。
暴れるけど捕まえて溝から出して放したのよ。
そこでわかったこと。
鴨は飛べなかった。
翼が折れているようで、飛ぼうと羽を広げても飛べず、逃げるように溝の中に逆戻りした。
車か何かとぶつかったみたいだった。
このまま餓死か猫の餌になるかとも考えたが、その日はしょうがないから餌になりそうなものを溝にまいて退散した。
時間も遅い。策もない。
一晩考えて夜が明けた。
・動物のことなら動物園
一通りのことをネットで検索したけれど、似たようなピンポイントな状況が検索に引っかかるわけもない。
朝になったから鴨を確認するために再び溝へ。
鴨は居た。
僕は途方に暮れていたので、動物園なら何か知恵を貸してくれるかもしれないと考えて、8時30分頃だろうか。電話をしたよ。
大代表から野鳥に詳しい方に電話を回してもらえるようにお願いした。
そこでの話の内容はこうだ。
傷ついた野鳥は動物園で保護をして治れば放鳥をすることもあるが、(当時は) 鳥インフルエンザの関係で野鳥を保護をすることができない。
とのこと。
僕の言いたいことも気持ちもわかるが、動物園ではどうすることもできないそうだ。
再び途方に暮れるかと思っていたところに、ヒントをもらえました。
このアドバイスは本当にありがたかった。
・合同庁舎
合同庁舎の中に自然保護の部署があって、そこで野鳥に関する相談に乗ってくれるとのとこでした。
お役所と聞くと害獣駆除のイメージが強いけれど、その逆の部署もあるらしい。市政ではなく県政の部署ですね。
「…をやっている部署があって…」という聞き方をしたので、その部署名は失念してしまいました。
動物園に直電の番号を教えてもらった「一縷の望み」です。
動物園に言われたように、電話で事情を話すと相談に乗っていただけました。
しかしそこでも、捕獲をしたとしても保護はできないと言われました。
本来は自然保護の観点で個体数の調査等をやっている部署だと思う。鴨の生態や生息場所に詳しかった。
翼を傷めているなら、野生ではもう飛べないだろうとも言われたし、他の場所に移しても飛べなければそのまま死んでしまうかもしれないとも言われました。
それらを踏まえた上で、提案をしてくれたんですよ。
鴨を捕まえて、そこから近い生息地に放鳥ならできる、と。
近くの一級河川の中洲なら猫が来ないし、そこは手つかずの自然が多くて鴨が多いからどうだろう?と言ってくれました。
なんかね、人の優しさに触れた気がした。
ありがたくて、その優しさに涙が出そうになったよ。
この2日間、ずっとどうしたらいいのかわからず困っていたところに差し込んだ一筋の光。
エゴかもしれないけれど、僕は『どうせ死ぬにしても溝から出して広い場所で死なせてやりたい』と心情をそのまま伝えました。
それならば、ということで溝の場所や詳細を伝えて、お任せすることにしました。
・救出隊の到着
僕は居なくていいと言われたけれど、やっぱり気になるからそこに居たんですよ。
一時間くらい経った頃に、ゴム長靴を履いた本気の職員さんが到着しました。
僕が知っている限りの状況を説明して、職員さんたちは捕獲準備に入りました。隊員は2名。
危険度が低い鴨一羽にお二人来ていただけました。いつも二人一組のチームで行動をしているのかもしれないね。
捕獲の前に写真や状況を記録して、ハイエースの後ろのハッチが開きました。
ケージや捕獲網や水槽、調査器具のような様々な機材が積まれていました。
専門の職員さんだから、本気も本気のフル装備です。
任せた以上、僕は遠くから見ていただけなのだけど、翼を傷めた鴨はあっさりと捕獲されました。その個体の写真を撮ったり、体重も測っていたように思います。
作業の報告をするんだろうね。
ケージに入れられて、ハッチが締まりました。
僕はお礼を言って、鴨さんを見送ることしかできなかったよ。
職員さんは『この足で放鳥して戻ります』と言い残して、さっそうと去っていきました。
・鴨がいない溝
全てが終わったのがお昼前だったかな。
前の日の夕方から僕にとってはとても長い一日だった。
もしも僕が鴨だったとしたら、人工物の狭い溝の中で死ぬよりも、広い自然の中で死にたいと思うだろうな、と自分に都合が良い言い訳をしながら、その場を去りました。
警察署から合同庁舎まで、いろんな人がいました。
相手の立場によって厳しいことを言われたり、優しいことも言われました。
あの鴨はどうなっただろう。
今も生き延びてくれているといいな。
ちょうど今頃の季節のことでした。
余談ですが、今でもあの動物病院だけは早く潰れてしまえばいいのにと思っています。
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