少し変わった妙なバイト

僕が学生だった頃に少し変わったバイトをしたことがある。

法に触れるような怪しいバイトではないとしても、もうそんなバイトをする機会はないだろう。

今回はそんな思い出話です。

・店番

職種というかバイトの内容は "店番" で、そのお店の場所というのが駅の地下街だった。

季節はクリスマス。

新幹線が停まる大きな駅の地下改札を抜けたところに広場があって、そこに特設売場としてクリスマスの飾りのお店が設営された。

ただの広場だからシャッターも何もなく、誰かが一晩中店番としてそこにいないといけなかった。

夜21時〜朝9時までの12時間。

駅の地下だから、トイレも飲み物の自販機もあるし監視カメラもある。

終電から始発までは暗くなるけれど、本が読めるくらいの明るさはある。

12月でそれなりに寒かったから、布団があれば布団を敷いて寝る場所もある。

"勤務中" の12時間はトイレ以外でお店を離れなければどう過ごしても良いという内容だった。

布団で寝てもいいし、起きてレポートを書くも漫画を読むも全て自由。

12時間と長めではあるが、やらなければならない業務はひとつもなく一晩で7000円だった。

時給にすると600円弱になるから割が悪いバイトになるけれど、暇な貧乏学生にはとてつもなく好条件・高待遇のバイトだったように思う。

一晩そこにいたら無条件で7000円あげますよ、ですからね。

そんな適当過ぎるバイトでした。

表向きは『寝るバイト』ではあるけれど、友だちを呼んでゲームをしたり、彼女を呼んで話をしていても何でもあり。

7000円が高いか安いかは主観によるだろうけど、僕はとても気に入っていた。

時給が高い安いは関係なかったですからね。僕らの世代の大学生はそんなもんじゃないかな。

例えば、一食配給 (持ち帰り) があるホカ弁のバイトを選んだこともあった。

時給は安いが、とりあえずバイトに行けば一食は間違いなく食える安心感。

貧乏学生だったから、お金よりも食いっぱぐれないことの方が大切だった。

時給が良いバイトをしても、結局そのお金を遣ってしまって食いっぱぐれそうになるからね。

卒業したら否が応でも働くことになるのだから、学生時代は多少貧乏でもできるだけ友だちと遊んだり、楽しく過ごしたいと思っていました。

・深夜の駅の地下街

少々騒いだところで深夜の駅の地下には誰もいない。

駅の地下街の警備員さんは警備員さんでちゃんといるから、アーバンジプシーというかホームレスの人が入ってくることはなかった。

僕がいたのは駅の地下改札を出たすぐ横だったこともあるし、警備員さんもそこに特設売場があることを知っていたわけだから、巡回もしてくれていた。

終電後も地下通路として開けてあるから誰でも入ってこれる。

実際、何人かは入ってきます。

駅裏から駅の表に抜ける通路として通る人、近道がてら通り抜ける人もいた。

その時間は階段しかないのに、なぜか自転車で入ってきて走り抜けていく人もいた。

多少怪しいそうに見える人もいたり様々でしたね。

地下街には防犯カメラがあるけれど、時間で向きが変わることもその時に初めて知った。

自動なのかマニュアル操作なのかはわからないが、できるだけ死角がないように動いてるようだった。

駅の地下街の防犯カメラをじっくり見ていることが普段ないから、向きが変わっていたことに気付いたときはちょっとビビった。

・寝ていると

駅の地下の広場に布団を敷いて寝るのだから、最初は寝られない。

落ち着く・落ち着かないで言えば、意外なようだけれど人がいないほうが落ち着かない。

空間が広すぎるんだと思う。学校の体育館の真ん中で一人で寝ているようなイメージ。

だけど、そのうち寝られるようになる。

毎夜一人くらいは『誰もいないから盗り放題だな〜』と友達と話しながら店内を覗き込む輩がいるが、僕を見ると例外なく驚く。

それも声が出るくらい。

床に布団を敷いて寝ている僕を見たから驚くのか、誰もいないと思って話していたことを聞かれたと思って驚いたのか、それはわからない。

皆さん、足早にその場を過ぎ去ります。

そんな人は何人も見たし、こちらはそのためにそこにいるのだから、お役目を十分果たしていたということなのだろう。

まあ、人がいないと思っていたところに人がいると怖いですからね。

人間が一番怖いというのも、なんかよくわかります。

・実際の過ごし方

そんなバイトだから、日付が変わるまでは友達や当時の彼女さんが冷やかしがてら差し入れを持って遊びに来てくれました。

トイレに行くにも『ちょっと見ててね』で行けるので気が楽だった。

雑誌や漫画を持ってきてくれたりね、友達はいいものです。

でも、終電の時間が過ぎて地下街の明かりが暗くなってからは一人になる。

友達も翌日講義があるから、適当な時間に切り上げる。彼女さんは遅くなる前に帰る。

そこから始発までの4時間半くらいが本当の正念場。

下手にトイレに行って帰ったときに誰かがお店の中にいたらどうしようと思ったり、真夜中にヤンキーの集団に襲撃されたら負けるよなーと思うわけですよ。

布団で寝ていて、目が覚めたときに何者かに囲まれていたら…と考えると、多少なりとも怖さがあります。

僕も翌日に講義がある大学生だから少しは寝ないといけないのに、なかなか寝られません。

・睡眠時間

いつ寝るのが安全かわかりますか?

僕が出した結論は、始発前に地下街が明るくなってから〜朝9時のバイト終了の時間まで。

特設売り場の担当さんは、埃よけのシートを外したり清掃のために午前8時30分頃に売場に来る。

始発の少し前から午前8時30分までだから、時間にすると四時間くらいだろうか。

つまり、朝のラッシュの雑踏の中で布団を敷いて寝るのが一番安全です。

朝は忙しい人が多く、茶々を入れる人も酔っ払いもヤカラ連中もいない。

のぞみ号が停まる駅ですからね、地方とはいえラッシュの時間帯は半端ではありません。

地下改札広場は多くの人が行き交う場所でもあるので、雑踏や駅のアナウンスが結構うるさい。

朝5時台の電車に乗る人は、何時にどうやって駅まで来ているのだろう。

そんなことを思いながら雑踏の中で布団に入ります。とてもうるさい中だけど安心して眠れます。

人混みの中で布団を敷いて寝ていると、違う世界にいるような不思議でおおらかな気分になりますね。

目が覚めても雑踏の中。

これはなかなかできない経験です。

目が覚めて布団を片付けて、売り場の人に『何もありませんでした』と報告してバイト終了。

本当に何もないですから。

人が一晩中店番している効果は絶大だと思う。

・バイト中に起きたこと

事件はないけれど、どこから入ったのかバイクが地下街を走ったことがありましたね。

近くまで来ないから状況はわからないけれど、音はバイク。

前述したように階段の入口しか開いていないはずなのに、どうやって入ったのだろう。

僕が知らない夜でも動く搬入用のエレベーターがあったのだろうか。

気にはなるが真夜中の薄暗い駅の地下街は、広くて寒くて誰がいるのかわからない世界。

ダンジョンみたいで、ちょっと薄気味悪いです。怖いというよりは気味が悪いね。

約2週間の特設売り場の最大の "事件" がバイクの疾走くらいなものです。

夜間でも警備の人がいて防犯カメラもあるし、そういう意味では安全でした。

朝のラッシュ時に、不特定多数の人に寝顔を見られても気にしない人であれば、誰でもできるバイトだったと思う。

・クリスマスイブ

クリスマス向けの特設売場なので、12月25日のクリスマス当日までのバイトだったと思う。

25日まで売り場を開いて26日に撤収だったから、25日の夜が最終日だった。

僕は当時彼女さんがいたので、クリスマスイブの夜は孤高の友達に代打を頼んだ。

大学も冬休みに入っていて、どうせ暇にしているからと快く引き受けてくれた。

持ちつ持たれつの友達だったから、ロクでもない友達だが心強い友達でもあった。

クリスマスイブの夜は彼女さんと過ごしていたけれど、やはり友達に義理と恩がある。

寝る前に、彼女さんと二人でクリスマスケーキを友達に配達に行った。

静かな駅の地下街で、布団に入って漫画を読んでいたよ。

たぶん僕と同じで、その非日常的な異常な空間を楽しんでいたんだと思う。

20冊くらいの漫画を持ち込んでいたから、最初からそのつもりだったのだろう。

ひとしきり話をしながらケーキと温かい飲み物を差し入れて、何事もなく帰宅。

単発バイトとはいえ連続したバイトだったので、ちょいとお財布が潤った大学2年のクリスマスだでした。


今考えても駅の地下で寝るバイトは変わっていたと思う。

バイト料は終了時に手渡しでした。

税金とか、いろいろ緩い時代だったんだろうね。

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