バセドウ病
バセドウ病=甲状腺機能亢進症をご存知だろうか。
一般に遺伝する病気とも言われているが、僕の場合はあまり関係がなかった。親族でバセドウ病は僕一人。
目が出る病気として名高く、原因がわからないので根本的な治療法はない。
今回のブログ記事は、そんな病気の記録です。
・症状
一行で書くなら、よく食べてよく飲んでイライラしながら痩せてゆく。
シャレじゃなく1日に5000kカロリーくらい摂取して、2〜3リットルくらい水を飲む。
それでも痩せてしまう。
牛丼をおかずにして、どんぶりのご飯を食べることは普通にある。
病気の理屈や詳しい説明はお医者さんのブログ等を読んでもらうとして、イメージとしては体内の暴走。
代謝がとても激しくなって、いくら燃料を入れても入れてもガス欠になる。
運動をしようものならすぐに息切れをしてどうにもならない。自宅で二階に上がっただけで息が切れる。
代謝が良くなりすぎて平熱がずいぶん上がり、37度を超えるのは当たり前で38度を超える日もある。
風邪などの発熱で38度を超えると寒く感じるけれど、甲状腺の場合は暑いんですよ。
体内が暴走しているので、冬が寒くない。一年中薄着になって季節感がない男になる。
バセドウ病が一段落した後の冬は、とても寒かった。
その当時を振り返ると、何をどう考えても異常だったと思う。
しかし、病状は徐々に悪化するから本人としてはあまりバセドウ病を感じることがない。
男に多く見られる症状のひとつに四肢麻痺がある。これはわかりやすい自覚症状のひとつ。
手足が震えるのは日常茶飯事で、気を抜くと勝手に膝カックンをしてしまい立てなくなる。
例えばコタツに入っていて、出ようとしても出られない。
前兆がなく、気が付いたら麻痺をしていて立てない。力が入らない。動かない。
麻痺をしている時間は短いときもあれば長いときもある。
文字で書くとそうでもないけれど、急に立てなくなるのは不自由なものです。
入院中にトイレに行こうと思ったら、腰砕けになってベッドに上がれなくなってしまい、ナースさん二人に起こしてもらってベッドに上げてもらったこともある。
四つん這いになっても脚に全く力がはいらず動かないから、腕の力だけで這うようなもの。
自宅の階段も四つん這いで登る。麻痺をしているときは階段を降りることができない。
腕も麻痺をするけれど、指が動くからあまり不自由はない。腕が伸ばしにくかったりする程度。肘をつくことができるから、脚よりはなんとかなる。
前兆とも言えるような腱が縮む感覚があるのだけど、その感覚がしたときにはもう麻痺をしているから前兆とは言えない。これも症状のひとつなんだろう。
バセドウ病の症状のひとつに血糖値が高くなることがあるようで、それに加えてとにかくよく食べて飲みまくることにより血糖値がガンガン上がる。肝臓の数値も何やら上がる。
頻脈で不整脈で高血圧。
脈拍数が100を下回ることがなく、不整脈による動悸で心臓が止まりそうになってとても怖い思いをする。血圧も160を下回らなくなる。
挙句の果てには心臓に水が溜まって、心臓の薬も長い期間飲んでいました
歯車がひとつ欠けるとすべてが上手く動かなくなるように、様々な体調不良が起こりました。
・死にかけた話
体内の暴走がバセドウ病なら、甲状腺の暴走が『甲状腺クリーゼ』。
これは甲状腺の行き過ぎた異常であり、本当に死にます。
わかりやすく書くと、バセドウ病発症 → 体内が暴走 → 甲状腺が暴走 → 暴走していた体がオーバーヒート となる。
オーバーヒートが起こると生命維持装置が働くようで、昏睡して体を治そうとします。
僕は一週間くらい意識がなく、気が付いたら大学病院の集中治療室にいた。
たまに目が覚めた記憶はあるが『点』の記憶でしかない。
体がオーバーヒートに耐えられなくなると、昏睡してそのまま亡くなるようだ。
僕は崖っぷちから引き返すことができたけれど、寝ている間にお医者に危篤と告げられて、親族を呼ぶように言われたそうだ。
とにかく甲状腺クリーゼはそんな重篤な病気で、ここまでひどくなることは少ないらしい。
少ないけれど無い話ではないので、バセドウを甘く見ないほうがいい。
・治療
根本的な原因はわからないが、甲状腺の働きを抑えてやれば症状が緩和されることがわかっているので、甲状腺ホルモンを薬でコントロールすることが一番手っ取り早い。
バセドウ病だとわかった時点からメルカゾールという薬を飲んでいたけれど、最大量になってしまって副作用が出た。
白血球が減少して、そこでメルカゾールの服用は終了。
ここで治療の選択をすることになる。
甲状腺の切除かアイソトープ治療か。
アイソトープ治療を実際に行える病院はそんなに多くないが、僕は大学病院に入院していたからアイソトープ治療を選ぶことができた。
甲状腺の切除は外科的に切り取ってしまう治療法で、アイソトープ治療は甲状腺を壊して働きを悪くする放射性物質を使う治療法。
でもね、アイソトープ治療はちょうど良いところで止められないから、多くの場合は橋本病 (※後述) になります。
甲状腺を壊すと二度と再生しない。つまり「0」になる。
僕はもう甲状腺クリーゼまで登り詰めていたので選択の余地はない。間髪入れずにアイソトープ治療を開始。
二回飲みましたよ。ヨウ素131のカプセルを。
飲んだ直後ではないけれど、しばらく経って甲状腺が徐々にしぼみ始めました。
僕の甲状腺はお医者が驚くほど肥大していて、学会用のサンプルとして写真をたくさん撮られた。ひと目で甲状腺の形がわかるほど膨れていた。
甲状腺の腫れが引き始めると症状が一気に改善しました。
・治療の結果
無事、橋本病になりました。
橋本病は甲状腺ホルモンが出なくなる (少なくなる) 病気のこと。
僕はアイソトープ治療で甲状腺を壊したので、甲状腺が出なくなるのは当たり前。
それはアイソトープ治療をする前からわかっていたことなので、特に驚くことではなかった。
が、今度は経口薬で甲状腺ホルモンを補わなくてはなりません。
甲状腺クリーゼで死にかけた僕にとっては、バセドウ病よりも橋本病のほうが楽。
チラーヂンという薬を飲んでいて、その薬の用量が決まってしまえば後が楽なんですよ。
「楽」というと語弊があるかもしれませんが、比較的長期で薬を出しもらえて通院の回数が減り、時間的にも金銭的にも楽になりました。
そのかわり、一生薬を飲み続けることになりますけどね。
橋本病の場合はたまに薬を飲み忘れても生きていられるし、なによりももう二度と甲状腺クリーゼで死にかける危険性がなくなるという安堵感のほうが強かったです。
薬を飲むだけで生きながらえることができると思えば、気が楽ですよ。
バセドウ病でメルカゾールを服用していたときは、通院が面倒くさかった。仕事を頻繁に休んで通院するということが面倒くさくなるんですよね。
そんな面倒くさがりな性格が、甲状腺クリーゼを引き起こす原因につながったのかもしれません。
甲状腺に関して言えばアイソトープ治療で終わりとなるわけですが、長年バセドウ病を患っていた僕にはまだまだ問題が山積していました。
・その後
バセドウ病だけでも血糖値が高くなるそうですが、そこに長年の大量摂食をしていたものだから本気の糖尿病になりました。
インスリン注射を打たなければならないほどの重度の糖尿病。
今はインスリン注射から経口薬に切り替えることができましたが、インスリン注射は費用もかかるし面倒くさいし、血糖値計や注射器を持ち歩かなくてはならないのでいろいろと大変でした。
外食の前には車の中でインスリンを打っていましたね。それがイチイチ毎回のことだから、外食もしなくなりました。
ちなみに、インスリン注射は効果てきめんで、体調によっては一気に低血糖を引き起こすほど血糖値が下がります。
高血糖状態のときはそれだけでは死なないけれど、低血糖はそれだけで死ねるので気を付けなければなりません。
また、ステロイドを使った治療もしたのでステロイド抜きにも時間がかかりました。長い時間をかけて少しずつステロイドを抜いていくので、結構長かったですね。
僕の場合は1年近くかかったような気がします。
バセドウ病が落ち着いてもしばらくは食欲がそのままなので、一気に太ります。僕の場合は 52〜53kg だったのが70kg近くにまで増えました。
これはなんともならん。
今までは食べても食べてもガス欠をして痩せていたけれど、今度は一気にカロリー過多になります。
糖尿病の治療も始まっているのに食欲が止まらず、体が順応できません。
その食欲は徐々に落ちてくるのですが、その時に増加した体重は加齢とともに減らなくなってしまいました。
僕の脳は、日々食べ続けていたことを当たり前のことだと勘違いしてしまっていたんだろう。
頭ではわかっていても、食べたいという欲求が強かったです。
自転車を漕ぐのをやめてもしばらく走るようなもんですね。惰性とは恐ろしい。
バセドウ病罹患以降、インスリン注射をしていた頃が一番辛かったように思う。
2週間に一度、待ち時間が長い長い大学病院に通うのはアホらしいほど大変で、とにかく薬代がかかっていたのもこの時期。
もちろん一日三回の食事の度に打つインスリン注射も面倒で、体が落ち着くまでは何もできなかったように思います。
・『子供』
今でこそ健常者と同じ生活が送れるけれど、いろんな薬を飲んだり治療をしたので、子供がほしいと考えたときにそのことが頭をよぎっていました。
今はもうオッサンなのでそんな機会も少なくなりましたが、その当時は大真面目に考えていました。
例えば、過去に飲んでいた薬や治療が精子に何らかの影響があるとしたならば、子供に対してどう影響するのかわかりません。
そんな前例や副作用がなかったとしても、そういった「もしも」のときは、薬や治療のせいにしてしまうかもしれません。
なんかね、死にかけるほどの大病をすると、いろんなことを考えてしまうわけです。
ここで『子供』と言いましたが、最初に書いたように遺伝が関係しているとも言われるバセドウ病。
男性と女性の比率は 1:9 とも 2:8 とも言われており、圧倒的に女性の患者が多い病気です。そんな僕の子供が女の子だったら… と考えてしまいます。
・言っておきたいこと
死にかけた僕は、甲状腺クリーゼ後をすべて『余生』だと考えるようになりました。
生きているだけで儲けものです。
人にも優しくできるようになったし、自分の身の振り方を少し考えるようにもなりました。
大病をしても悪いことばかりではありません。死にかけたことにより自分を見つめ直すことができて、人生観が変わりました。
今では余生を楽しく過ごしています。
ところで、バセドウ病で眼球が出るのは半々のようで、すべての罹患者の目が出るわけではありません。僕は目が出ませんでした。
最後になりますが、ひとつだけ。特に女の人。
女の人で、オバチャンと呼ばれる世代になって患者が多くなるのがバセドウ病だそうです。
暑がりや血糖値の上昇など「体がおかしいな」と感じたときは、一度甲状腺の検査をしてみてください。血液検査だけでわかります。
「暑がり」なのは、自分で勝手に更年期障害だと素人判断をしないほうが懸命です。
例えば、食べて太るのは正常です。食べても食べてもお腹が空いて痩せてしまうのは病気です。
放っておくと、次に甲状腺クリーゼで死にかけるのはあなたかもしれません。
くれぐれもお気をつけて。
コメント
コメントを投稿